【りくりゅう金メダルの裏側】売上たった1000万のブレード開発。猛反対を押し切った名古屋の町工場「儲からなくてもやる」情熱
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先日開催されたミラノ・コルティナオリンピックで、フィギュアスケートのペア種目において日本人初の金メダルという快挙を成し遂げた「りくりゅうペア(三浦璃来選手・木原龍一選手)」。その歴史的瞬間の足元を支えていたのが、実は名古屋にある老舗の特殊鋼商社が作ったスケートブレードだったことをご存知でしょうか?
しかも驚くべきことに、そのブレード事業の売上は年間たったの1000万円。開発当初は社内から猛反対を受け、現在も「他社なら絶対にやらないレベル」の利益しか出ていないそうです。
それでも、なぜ彼らはブレードを作り続けるのか? 今回は、ものづくりへの情熱と、選手への愛が詰まった山一ハガネの「YS BLADES(ワイエスブレード)」誕生秘話をご紹介します。
素人からの挑戦。100足以上の試作と「曲がらない」刃
ブレードを開発したのは、創業99年を迎える名古屋の特殊鋼商社「山一ハガネ」です。 自動車部品の金型づくりで高い技術力を持っていたものの、スケートブレードの製造経験はゼロ。きっかけは小塚崇彦選手との出会いでした。
開発担当の石川マネージャーと、元社員の六車英高さんの2人は、本業のすきま時間や睡眠時間を削って開発に没頭。硬さと粘りに優れた特殊鋼を選び出し、削る順番や熱処理のタイミングなど、試行錯誤を繰り返しながら100足以上の試作を重ねました。
そして完成したのが、継ぎ目のない一体構造のブレードです。 通常のブレードは人間の手でパーツを溶接するためズレが生じますが、ミクロン単位で精密加工された山一ハガネのブレードは完璧なシンメトリー(左右対称)。これにより氷との抵抗が減り、「滑りが速くなる」という圧倒的なパフォーマンスを生み出しました。

トップ選手を救った「寿命2年」の奇跡
このブレードは、日本を代表するトップスケーターたちの悩みを次々と解決していきました。
- 宇野昌磨選手:
- 以前はブレードがすぐに歪んでしまうため「2週間ごと」に交換していましたが、山一ハガネの「YS BLADES」に変えてからは、なんと「2年間」も同じブレードを使い続け、北京五輪で見事銅メダルを獲得しました。
- 木原龍一選手(りくりゅうペア):
- 体格が良く、ブレードのプレートがすぐに曲がってしまうことに悩んでいました。当時、ケガでペアを解消し、資金的にも苦しい状況だった木原選手に寄り添い、数ヶ月かけて調整した「絶対に曲がらないブレード」を提供。その結果、滑りが劇的に速くなり、三浦選手とともにミラノ五輪の金メダルへと駆け上がったのです。
「儲からなくてもやる」社長の真意とは?
現在、全日本選手権に出場する男子選手の半数以上が使用するまでになった「YS BLADES」。しかし、2〜3年使い続けられるほど丈夫なため、購入頻度が低く、2025年度の売上は約1000万円にとどまっています。
開発当初、利益の出ない事業に社内からは冷ややかな視線が向けられ、猛反対もありました。それでも寺西基治社長がこの事業を止めなかったのには、深い理由があります。
- 社員がワクワクする環境づくり: 普段は「目に見えない自動車の金型」を作っている社員たちが、自社の技術がダイレクトに選手の活躍(金メダル)に繋がるのを実感できること。これが会社への誇りと採用力の強化に繋がっています。
- 機械の空き時間の有効活用: 外部からの受注状況に左右されず、自分たちのペースで生産できる自社商品を持つことで、工場の稼働率を安定させる目的もありました。
- 世の中に必要とされる会社へ: 「付加価値のない商売はいつか廃れる」という危機感から、他社には絶対に真似できない「唯一無二のものづくり」に挑戦し続ける姿勢を示しています。
まとめ:「相身互い」の精神が生んだ金メダル
取材の中で、寺西社長と石川さんは「全然買い替えてくれないんでね。私たち、商売が下手なんですよ」と笑って答えたそうです。 しかし、社長はこうも語っています。
「将来絶対にいいことがあるなって思いますよ。人の役に立ってますから。アイミタガイ(相身互い)です」
利益だけを追求するのではなく、困っている選手を助け、自社の技術で世の中の役に立つ。その純粋な思いと情熱が巡り巡って、日本人初のペア金メダルという最高の形で花開いたのですね。 日本のものづくりの底力と、温かい人情を感じる素晴らしいエピソードに、私も胸が熱くなりました。
【根拠・参考サイト情報】
本記事の内容は、以下のインタビュー記事を基に構成しています。
- プレジデントオンライン(MSNニュース配信): 社内は猛反対だった…「売上たった1000万円」りくりゅうのブレード作った社長が「儲からなくてもやる」真意(ライター:中谷秋絵氏)
- URL: https://president.jp/articles/-/110663?page=1
